『アンネ・フランク』

アンネ・フランク [DVD]
時代はまだユダヤ人の迫害が始める前。アンネが普通に生活を送り、誕生日のプレゼントとして日記代わりのサイン帳を希望しているところから始まる。無事誕生日を友人達に祝福されて過ごせたアンネだが、楽しく幸せな日々は長く続かなかった。姉のマルゴーに移送状(召集命令通知)が届いたのだ。母は子供達を不安にさせないためオットーに招集がかかったと言い、一家は「スイスへ行く」と周囲の人物たちにも嘘の情報を残し、父オットーの経営する香辛料会社の隠し部屋に身を置くこととなる。そこは、父がこの日のために前もって準備がされており、家具やあらゆるものが運びこまれていた。父の会社の従業員(非ユダヤ人)が食糧などの生活必需品をこっそり運び入れてくれる。共同生活を送るペルス一家、プフェファー歯科医と共に、ラジオで連合軍がドイツを下すのも時間の問題だという情報に希望を持ち、8人は喧嘩や歩み寄りを繰り返しつつ過ごしていた。アンネもペーター・ペルスとその空間で恋仲になっていった。しかし、会社が雇った胡散臭そうな男にユダヤ人を匿っている気配を察知され通報される(通報者には賞金が与えられる)。ゲシュタポ(ドイツ秘密警察)とオランダ警察の数名が会社の捜索に上がりこみ、形式上社長となりフランク一家達を匿っていたクーフレルに銃を突きつけて脅し隠し部屋へ案内させ、フランク一家、ペルス一家、プフェファーは逮捕される。
召集命令に応じなかった8名は、ステルボルク通過収容所を経てアウシュビッツ強制収容所へと移送された。そこへ到着するなり男女分けされ、オットーは家族と離れ離れに。母・姉・アンネは身につけていた物を取り、髪も無理矢理短髪にさせられ、ユダヤ人の囚人ナンバーを腕に彫られた。やがて、母とも離れ離れに。アンネは姉と共にベルゲン・ベルゼン強制収容所へ移った。そこは食糧は与えられず環境も劣悪で餓死者・病死者の多い場所だった。アンネはそこでリーンチェとヤニー姉妹と交流を持つ。一度離れてしまったペルス夫人もベルゲン・ベルゼンに来て、特別待遇される別区画にアンネの友人がいると教える。アンネは見張りに見つからないよう、その友人ハンネに食糧を乞うたりした。そうして得た食糧をマルゴーに与えるアンネ。マルゴーは病気にかかっており、日に日に弱っていたのだ。そして介護のかいも虚しくマルゴーが亡くなり、アンネも2〜3日遅れて息を引き取ったという。
ドイツ軍が降伏し、収容所に送られた人々が解放された。隠れ家メンバー8名の内、帰還できたのは唯一オットーのみ。彼が家族の安否情報を求めているところへ、アンネやマルゴーと共にベルゲン・ベルゼンに収容されていた姉妹が現れる。話を聞き、絶望に暮れるオットー。彼を補助していた従業員ミープは、ドイツ軍に捨てられない内に大事に保存していたアンネの日記をオットーに差し出した。


★★★★★5/5
ナチス・ドイツと言うとガス室のイメージがあり歴史を誤認していたが、ガス室でなくなったのはペルス家の家長ヘルマン一人。アンネとマルゴーは(生存者の証言で)チフスで亡くなったという事実がしっかり確認できる作品。特に母の餓死(彼女は離れ離れになった子供達へ、会えた日のために支給されたパンを食べずにとっておいた。)については、娘を想う母の愛に悲しみもいっそう加わり、戦争の惨さを痛感する。
3時間以上の作品だが、6時間以上観ていたような気分にもなる。長ったらしい…というわけではなく、倍の時間の価値が詰まった作品。